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判例紹介:「スクリューポイント」審決取消訴訟事件

17.04.03 判例

【判決日】平成28年11月30日判決言渡
【事件番号】平成28年(行ケ)第10027号 審決取消請求事件
【判例要旨】

第1 結論
「特許庁が無効2015-800018号事件について平成27年12月25日にした審決を取り消す」旨の原告の請求を棄却する。

第2 事案の概要
1.特許庁における手続の経緯等
平成 9年 3月31日:本件出願→ 平成14年11月 1日:特許権の設定登録→ 平成27年 1月21日:被告による無効審判の請求(請求項1,2)→ 平成27年10月21日:原告による訂正請求書(本件訂正)の提出→ 平成27年12月25日:無効審決(請求項1,2)→ 平成28年 2月 2日:本件訴訟の提起
2.特許請求の範囲の記載(下線部は,本件訂正による訂正箇所)
【請求項1】(本件訂正発明1)
スウェーデン式サウンディング試験に際して,一端に有底のめねじ,他端におねじが一体成形された所定の長さのロッド部材のめねじに取り付けられ,ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され,所定の荷重と,必要に応じて付与される回転とによってロッド部材と一体に地中に貫入されるスクリューポイントであって,
先端尖鋭な本体部を有し,この本体部の基端部にめねじを形成し,このめねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成したことを特徴とするスクリューポイント。
【請求項2】(本件訂正発明2)
本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のスクリューポイント。
3.本件審決の理由の要旨
(1)本件訂正発明1は,当業者が,引用発明1,2又は4,及び周知例1ないし5に記載の周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、本件訂正発明2は,引用発明1において材質に係る技術事項を特定した発明(引用発明1の2),引用発明2又は4,周知例1ないし5に記載の周知技術,及び引用例3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
(2)本件訂正発明と引用発明1との対比
A.本件訂正発明1と引用発明1、及び本件訂正発明2と引用発明1の2との一致点
~省略~
B.本件訂正発明1と引用発明1との相違点
相違点1:ねじ部について,本件訂正発明1は「(本体部の基端部に形成した)めねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結するように構成した」のに対し,引用発明1は「雌ねじ部21に継手ロッド3の雄ねじ部31が螺合して連結するように構成した」ものである点。
相違点2:ロッド部材同士の連結構造(おねじとめねじ)について,本件訂正発明1は「他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」ているのに対し,引用発明1は「他端に雌ねじ部32が設けられた」「継手ロッド3の雌ねじ部32に他の継手ロッド3の雄ねじ部31を連結して延長可能に構成され」ている点(すなわち,連結部におけるロッド部材に設けたおねじとめねじの配置が,本件訂正発明1と引用発明1とでは逆の関係である点。)。
C.本件訂正発明2と引用発明1の2との相違点
相違点3:本件訂正発明2は「本体部は無頭ねじ部品に対して硬度が高くなるよう構成し,また無頭ねじ部品は本体部に対して高い靭性を有するように構成した」のに対し,引用発明1の2は,スクリューポイント2(スクリューポイントの本体部)は「クロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料」からなり,「継手ロッド3は,S45C,SS41等の鋼材からなる」点。
4 取消事由
(1)本件訂正発明1の容易想到性の判断の誤り(取消事由1)
ア 本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定の誤り
イ 相違点1の容易想到性の判断の誤り
ウ 相違点2の容易想到性の判断の誤り
(2)本件訂正発明2の容易想到性の判断の誤り(取消事由2)
ア 本件訂正発明2と引用発明1の2の相違点の認定の誤り
イ 相違点3の容易想到性の判断の誤り

第3 裁判所の判断
A.取消事由1(本件訂正発明1の容易想到性の判断の誤り)について
(1)本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定の誤りについて
~省略~ 本件審決において,本件訂正発明1と引用発明1の相違点の認定に誤りはない。よって,原告の主張は理由がない。
(2)相違点1についての容易想到性の判断の誤りについて
ア 本件訂正発明1と引用発明1の課題について
本件訂正発明1は,従来のスクリューポイントについて,本体部とおねじ部が一体で形成されていたため,本体部に必要な硬さとおねじ部に求められる強度及び靱性という性質の両立が困難であったところ,「ドリル状の本体部に対して無頭ねじ部品をロッド部材の接続部材とすることにより,貫入時に土砂に接する本体部とロッド部材との接続部材である無頭ねじ部品それぞれに必要な性質を確保可能としたもの」であると認められる。
一方,引用発明1は,従来おねじを有するスクリューポイント本体部が固い材料であるため,おねじが折れてしまう場合があったので,スクリューポイントにおねじを無くし,連結部をめねじ部として,このめねじ部に継手ロッドのおねじ部を連結するようにして,スクリューポイントの破損を防止したものである。
したがって,本件訂正発明1と引用発明1は,スクリューポイントに設けられたおねじ部が破損しやすいので,スクリューポイントに設けられたおねじ部をスクリューポイントとは別部材にするという共通の課題を有している。
イ 引用例2及び引用例4の副引用例としての適格性について
~省略~ 引用例2及び引用例4が,本件訂正発明1における副引用例として適格性を欠くものとは認められない。
ウ 無頭ねじ部品について
原告は,引用例2,引用例4及び周知例2ないし4においては,両端のねじの間の外径がねじ部分より大きく実質的に頭部になっているので,無頭ねじ部品は開示されていない旨主張する。引用例2,引用例4及び周知例2ないし4に係るものは,ねじの間に拡巾部を有するものではあるが,軸の終端に頭部を設けたものではなく,めねじを有する2部材の連結に用いられ,めねじ部分の連結を図るものであるから,証拠(乙1,2)に照らしても,本件訂正発明1における「無頭ねじ部品」に相当するというべきである。また,引用例2におけるロッドカップリング,引用例4における部材33は,地質試験装置に係る継手において,めねじを有する2部材の連結を図り,一方のめねじを有する部材から他方のめねじ部品を有する部材へ動力を伝達する点で,本件訂正発明1における「無頭ねじ部品」と同様の作用効果を奏するものと認められる。さらに,周知例1ないし5によれば,継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは,周知技術であると認められる。
エ 引用発明1を主引例とする容易想到性について
a)本件訂正発明1は,ドリル状の本体部に対して無頭ねじ部品をロッド部材の接続部材とすることにより、本体部と無頭ねじ部品それぞれに必要な性質を確保可能として,「スクリューポイント本体部」-「無頭ねじ部品」-「ロッド」による連結構造とした点に技術的意義がある。そして,引用例2又は引用例4には,地質試験装置に係る継手において,めねじを有する2部材の連結を図り,一方のめねじを有する部材からねじ部品を介して他方のめねじ部品を有する部材へ動力を伝達可能とした点が開示されている。また,周知例1ないし5によれば,一般に継手手段において,「無頭ねじ部品」(両端にねじがあり軸の終端に頭部のないねじ部品)を用いることは周知である。したがって,スウェーデン式サウンディング試験装置において,モータからロッド部材を経てスクリューポイントへ至る動力伝達経路中に,無頭ねじ部品を設けることは当業者が必要に応じて容易に想到し得るので,引用発明1において,めねじ部21に継手ロッド3のおねじ部31が螺合して連結する構成(スクリューポイントと継手ロッドとの直接連結構成)に代えて,めねじに無頭ねじ部品を一端が突出するように螺合し,この無頭ねじ部品をロッド部材のめねじに螺合して連結する構成(無頭ねじ部品を介する連結構成)とすることは容易に想到することができると認められる。その際に,無頭ねじは,継手ロッドとスクリューポイントとを,ねじを用いて連結できればその機能を果たすものであるから,拡巾部を有することは必ずしも必要な構成ではなく,拡巾部を有さない周知の無頭ねじを採用することは設計事項にすぎないと認められる。
b)また,スクリューポイント2への接続を継手ロッド3の直接連結構成に代えて無頭ねじを介して連結する構成とすれば,スクリューポイントに連結される無頭ねじを,継手ロッド3のおねじ部31と同様に,従来のスクリューポイントのおねじにかかっていた回転力に耐え得る強度を有する材質のものとすることは,当然になし得る。したがって,相違点1に係る本件訂正発明1の構成は容易に想到することができる。
c)原告の主張について
原告は,引用発明1は,スクリューポイントからおねじ部を無くすという解決手段を採用しているのであって,スクリューポイントからおねじ部を実質的に無くさない解決手段を採用する本件訂正発明1の構成を採用することには阻害要因があると主張する。しかし,引用発明1と本件訂正発明1とはスクリューポイントに設けられたおねじ部をスクリューポイントとは別部材にするという共通の課題を有するのであって,継手(連結)手段として無頭ねじ部品を用いることは,周知技術であるから,上記課題のもと,連結部材として周知技術の適用を試みることは,当業者が適宜なし得ることであり,阻害要因があるとは認め難い。
(3)相違点2についての容易想到性の判断の誤りについて
相違点1に係る本件訂正発明1の構成は,容易に想到することができ,スクリューポイントへの接続を継手ロッドの直接連結構成に代えて無頭ねじを介して連結する構成とすれば,おのずと無頭ねじに接続される継手ロッドの接続部分はめねじとなり,他端部分はおねじとなり,そのおねじに接続される他のロッド部材の接続部分は,めねじとなるものと認められる。すなわち,相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採用すると,引用発明1における継手ロッドのおねじとめねじの配置が逆になることは自明である。よって,相違点2に係る本件訂正発明1の構成,「他端におねじが一体成形された」「ロッド部材のおねじに他のロッド部材のめねじを連結して延長可能に構成され」るという構成に至る。
原告は,引用発明1の目的(課題)は,「スクリューポイントに従来設けられていたおねじ部を無くして,代わりにスクリューポイントにめねじ部を設けるとともに,継手ロッドにおねじ部を設けてこれらスクリューポイントと継手ロッドとを結合するように構成したものである」から,スクリューポイントの連結対象をロッドのめねじ部に変更することは上記目的に反し,阻害事由があると主張する。しかし,引用発明1の課題は,スクリューポイントに設けられたおねじ部が破損しやすいので,スクリューポイントに設けられたおねじ部をスクリューポイントとは別部材にするというものであるから,継手ロッドのおねじ部をめねじ部に変更することが上記目的に反するとはいえず,阻害事由があるとの原告の主張は理由がない。
(4)効果について
原告は,本件訂正発明1の顕著な効果として,無頭ねじ部品の素材やその特性の限定をしていない本件訂正発明1においても,破損の問題を解決することができる旨主張する。しかし,本件訂正明細書には,「無頭ねじ部品4は靱性が高いため,このような曲げモーメント,引っ張り応力などに耐え得る。」(【0009】),「無頭ねじ部品には高い靱性を持たせて曲げモーメント,引っ張り応力などによる折損を防止するとともに,」(【0010】)と記載されているのであって,あくまで「無頭ねじ部品」が高い靱性を有しているとの理由で折損を防止する態様しか記載されていないのであるから,上記主張は本件訂正明細書の記載に基づかないものである。また,甲34(スクリューポイント応力解析シミュレーション結果報告)は,実際のスクリューポイントの使用条件下における応力を示したものでなく,本件訂正発明1とJIS品及び引用発明1との差異(応力差)が顕著であるとはいい難く,本件訂正発明1の構成のみで顕著な効果が生じるとは認め難い。
原告は,引用発明1では,継手ロッドに設けたおねじ部が折れてしまうおそれがあるので,引用発明1と比較して本件訂正発明1は顕著な効果を奏すると主張する。しかし,当業者であれば、引用発明1における継手ロッド3のおねじ部31が,従来のスクリューポイントのおねじのように折れてしまわないように材質等を配慮することは当然であり,現に,おねじ部31は,従来のスクリューポイントのおねじにかかっていた回転力に耐え得る強度を有する材質(S45C,SS41等の鋼材)であると推認される。したがって,原告の上記主張は理由がない。
(5)発明の困難性及び商業的成功について
原告は,従来のおねじ一体型のスクリューポイントではおねじ部が折れやすいという問題点が長年解決されなかったこと,及び本件特許の出願人であり権利者の商業的成功が,本件訂正発明1に進歩性があることを肯定する要素になる旨主張する。しかし,本件訂正発明1が進歩性を有するかどうかは,先行技術との比較で決まるのであって,課題が長年解決されなかったことや商業的成功があるからといって,進歩性が認められるものではなく,原告の上記主張は理由がない。
(6)小括
したがって,本件訂正発明1は,引用発明1,引用発明2又は引用発明4及び周知例1ないし5によって認められる周知技術を組み合わせることによって,容易に想到することができたものである。よって,取消事由1は,理由がない。
B.取消事由2(本件訂正発明2の容易想到性の判断の誤り)について
(1)本件訂正発明2と引用発明1の2の相違点の認定の誤り
~省略~
(2)相違点3についての容易想到性の判断の誤りについて
ア 引用発明1の2について
引用例1には,スクリュウーポイント2(本体部)にクロムモリブデン鋼,セラミック等の固い材料,接続される継手ロッド3にS45C,SS41等の鋼材を用いているので,スクリューポイント本体部が接続部材に対して硬度が高くなるよう構成した点が記載されているものと認められる。
イ 甲16文献(「スウェーデン式サウンディング試験方法 JIS A 1221-1995」)には,スクリューポイント本体部が接続部材に対して硬度が高くなるよう,接続部材がスクリューポイント本体部に対して高い靱性を有するように構成した点が記載されているものと認められる。
ウ 引用例3(「土と基礎 Vol.12 No.7」の23ないし29頁,資料-76「JIS原案 スウェーデン式サウンディング試験法」)には,スクリューポイントを耐摩耗性の大きな特殊鋼製,ロッドを鋼製とすること,スクリューポイントは,摩耗しにくいものであることが必要であること,材質としては,焼入れが可能なものを使用し,すくなくともS-50-C以上の高炭素鋼,あるいはSK-2以上の炭素工具鋼などが適切であること,ロッドは,材質を機械構造用炭素鋼とすること,連結部に強じん特殊鋼を用いて連結部の強さを増加させる試みがなされていることが記載されている。したがって,引用例3には,スクリューポイント本体部が接続部材に対して硬度が高くなるよう,接続部材がスクリューポイント本体部に対して高い靱性を有するように構成した点が記載されているものと認められる。
エ 相違点3の容易想到性について
相違点1に係る本件訂正発明1の構成は,容易に想到することができ,無頭ねじをスクリューポイント本体部とロッド部材の間に介して連結する構成とすれば,無頭ねじがスクリューポイント本体部の接続部材となり,接続部材に必要な力学的性質(硬度及び靱性)を有するものとすることは自明である。したがって,当業者であれば,相違点3に係る本件訂正発明2の構成とすることは容易に想到することができる。
オ 小括
したがって,本件訂正発明2は,引用発明1の2,甲16文献記載の事項及び引用例3記載の事項を組み合わせることによって,容易に想到することができたものである。よって,取消事由2は,理由がない。
C 結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。

以上