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判例紹介:平成29年(行ケ)第10232号 特許取消決定取消請求事件

18.11.07 判例

【判決日】平成30年10月17日判決言渡
【事件番号】平成29年(行ケ)第10232号 特許取消決定取消請求事件(http://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/058/088058_hanrei.pdf)
【関連条文】特許法2条1項
【関連する権利番号等】特許第5946491号,異議2016-701090号
【判決要旨】
第1 結論
 特許庁が異議2016-701090号事件について平成29年11月28日にした決定を取り消す。
第2 事案の概要
1.特許庁における手続の経緯等
(1)原告は,名称を「ステーキの提供システム」とする発明につき,平成26年6月4日に特許出願をし(特願2014-115682号),平成28年6月10日,その設定登録を受けた(特許第5946491号)。
(2)被告補助参加人は,平成28年11月24日,本件特許の請求項1~6について特許異議申立てをしたところ(異議2016-701090号),原告は,平成29年9月22日付けで特許請求の範囲を訂正する訂正請求をした(以下,「本件訂正」という)。
 特許庁は,同年11月28日,「特許第5946491号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1~6]について,訂正することを認める。特許第5946491号の請求項1~6に係る特許を取り消す。」との決定をし,その謄本は,同年12月7日,原告に送達された。
2.本件特許発明の要旨
 本件訂正後の本件特許の請求項1に係る発明は,次のとおりである。請求項2~6は省略。なお、下線は,本件訂正の訂正箇所を示す。また、原告の分説に従って,分説して示す。
【請求項1】
 A お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法を実施するステーキの提供システムであって,
 B 上記お客様を案内したテーブル番号が記載された札と,
 C 上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量する計量機と,
 D 上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印しとを備え,
 E 上記計量機が計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力することと,
 F 上記印しが上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載されたシールであることを特徴とする,
 G ステーキの提供システム。
第3 取消決定の理由の要点
(1)本件特許発明1の発明該当性について
 ア 本件特許発明1は,特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載(【0001】~【0003】,【0005】,【0016】)からすると,「お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供する」ことを「課題」とし,「お客様を立食形式のテーブルに案内するステップと,お客様からステーキの量を伺うステップと,伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップと,カットした肉を焼くステップと,焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップとを含むステーキの提供方法」を「課題を解決するための技術的手段の構成」として採用することにより,お客様が要望する量のステーキを,ブロックからカットして提供するものであるため,お客様は,自分の好みの量のステーキを,任意に思う存分食べられるものとなり,また,お客様は,立食形式で提供されたステーキを食するものであるため,少ない面積で客席を増やすことができ,またお客様の回転,即ち客席回転率も高いものとなって,「お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することができる」という「技術手段の構成から導かれる効果」を奏するものである。
 そうすると,この課題及びこの効果を踏まえ,本件特許発明1の全体を考察すると,本件特許発明1の技術的意義は,お客様を立食形式のテーブルに案内し,お客様が要望する量のステーキを提供するというステーキの提供方法を採用することにより,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供するという飲食店における店舗運営方法,つまり経済活動それ自体に向けられたものということができる。
 イ 「札」の本来の機能とは,ある目的のために必要な事項を書き記したり,ある事を証明することにあるところ,本件特許発明1の「札」も,お客様を案内したテーブルのテーブル番号が記載されており,他のお客様と混同しないように,あるいは案内したお客様のテーブル番号を明らかにするために札にテーブル番号を記載したものである。
 また,「計量機」の本来の機能とは,長さや重さなど物の量をはかり,その物の量を表示することにあるところ,本件特許発明1の「計量機」も,お客様の要望に応じてカットした肉の重さをはかって,その肉の重さをシールに表示するものである。
 また,「印し(これを具体化したものが「シール」である。)」の本来の機能とは,他と紛れないように見分けるための心覚えしたり,あるいはあることを証明することにあるところ,本件特許発明1の「印し(シール)」も,お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別するために,シールに計量機が出力した肉の量とテーブル番号を記載したものである。
 そうすると,本件特許発明1において,これらの物は,それぞれの物が持っている本来の機能の一つの利用態様が示されているのみであって,これらの物を単に道具として用いることが特定されるにすぎないから,本件特許発明1の技術的意義は,「札」,「計量機」,「印し」及び「シール」という物自体に向けられたものということは相当でない。
 ウ 本件特許発明1は,「ステーキの提供システム」という「システム」を,その構成とするものである。
 しかし,本件特許発明1における「ステーキの提供システム」は,本件特許発明1の技術的意義が,前記のとおり,経済活動それ自体に向けられたものであることに鑑みれば,社会的な「仕組み」(社会システム)を特定しているものにすぎない。
エ 以上によると,本件特許発明1の技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等に基づいて検討した本件特許発明1の技術的意義に照らすと,本件特許発明1は,その本質が,経済活動それ自体に向けられたものであり,全体として「自然法則を利用した技術思想の創作」に該当しない。
 したがって,本件特許発明1は,特許法2条1項に規定する「発明」に該当しない。
オ なお,本件特許発明1においては,「札」から「計量機」へ,「計量機」から「印し」へとテーブル番号は伝達されているともいえるが,その伝達が有機的とまではいえず,特殊な情報の伝達でもない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件特許発明1の発明該当性判断の誤り)について
(1)本件特許発明1の技術的意義
ア 本件特許発明1は,お客様に,好みの量のステーキを,安価に提供することを目的(課題)とする。そして,本件ステーキ提供方法の実施に係る構成(構成A)により,お客様が好みの量のステーキを食べることができるとともに,少ない面積で客席を増やし,客席回転率を高めることができることから,ステーキを安価に提供することができる。また,本件計量機等に係る構成(構成B~F)により,お客様の要望に応じてカットした肉が他のお客様の肉と混同することを防止することができる。
イ 本件計量機等は,「札」,「計量機」及び「シール(印し)」といった特定の物品又は機器(装置)であり,「札」に「お客様を案内したテーブル番号が記載され」,「計量機」が,「上記お客様の要望に応じてカットした肉を計量」し,「計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力」し,この「シール」を「お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別する印し」として用いることにより,お客様の要望に応じてカットした肉が他のお客様の肉と混同することを防止することができるという効果を奏するものである。
 そして,札によりテーブル番号の情報を正確に持ち運ぶことができるから,計量機においてテーブル番号の情報がお客様の注文した肉の量の情報と組み合わされる際に,他のテーブル番号(他のお客様)と混同が生じることが抑制されるということができ,「札」にテーブル番号を記載して,テーブル番号の情報を結合することには,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義が認められる。また,肉の量はお客様ごとに異なるのであるから,「計量機」がテーブル番号と肉の量とを組み合わせて出力することには,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義が認められる。さらに,「シール」は,本件明細書に「オーダー票に貼着」(【0012】),「カットした肉Aに付す」(【0013】)と記載されているとおり,お客様の肉やオーダー票に固定することにより,他のお客様のための印しと混じることを防止することができるから,シールを他のお客様の肉との混同防止のための印しとすることには,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義が認められる。このように,「札」,「計量機」及び「シール(印し)」は,本件明細書の記載及び当業者の技術常識を考慮すると,いずれも,他のお客様の肉との混同を防止するという効果との関係で技術的意義を有すると認められる。
 他方,他のお客様の肉との混同を防止するという効果は,お客様に好みの量のステーキを提供することを目的(課題)として,「お客様からステーキの量を伺うステップ」及び「伺ったステーキの量を肉のブロックからカットするステップ」を含む本件ステーキ提供方法を実施する構成(前記ア(イ)①)を採用したことから,カットした肉とその肉の量を要望したお客様とを1対1に対応付ける必要が生じたことによって不可避的に生じる要請を満たしたものであり,このことは,外食産業の当業者にとって,本件明細書に明示的に記載されていなくても自明なものということができる。このように,他のお客様の肉との混同を防止するという効果は,本件特許発明1の課題解決に直接寄与するものであると認められる。
ウ 以上によると,本件特許発明1は,ステーキ店において注文を受けて配膳をするまでの人の手順(本件ステーキ提供方法)を要素として含むものの,これにとどまるものではなく,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(装置)からなる本件計量機等に係る構成を採用し,他のお客様の肉との混同が生じることを防止することにより,本件ステーキ提供方法を実施する際に不可避的に生じる要請を満たして,「お客様に好みの量のステーキを安価に提供する」という本件特許発明1の課題を解決するものであると理解することができる。
(2)本件特許発明1の発明該当性
 前記(1)のとおり,本件特許発明1の技術的課題,その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らすと,本件特許発明1は,札,計量機及びシール(印し)という特定の物品又は機器(本件計量機等)を,他のお客様の肉との混同を防止して本件特許発明1の課題を解決するための技術的手段とするものであり,全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するということができる。
 したがって,本件特許発明1は,特許法2条1項所定の「発明」に該当するということができる。
以上