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判例紹介:「力伝達装置」審決取消請求事件

19.07.09 判例

【判決日】平成31年2月18日判決言渡
【事件番号】平成29年(行ケ)第10200号審決取消請求事件
【口頭弁論終結日】平成30年12月18日
【キーワード】進歩性、サポート要件
【判例要旨】
1.主文
 特許庁が無効2016-800104号事件について平成29年10月4日にした審決を取り消す。
2.事案の概要
(1)特許庁における手続の経緯等 
 平成20年11月17日:国際出願(優先日:平成19年11月29日)→ 平成25年8月12日:手続補正書→ 平成26年2月14:設定登録(特許第5473933号)→ 平成26年4月23日:無効審判1請求、平成27年3月3日:審判請求は成り立たない旨の審決→ 平成28年8月15日:無効審判2請求→ 平成29年10月4日:審判請求は成り立たない旨の審決→ 平成29年11月10日:本件訴訟提起
(2)特許請求の範囲の記載
 【請求項1(本件発明1)】
 駆動装置と被駆動装置との間で出力伝達するための力伝達装置(1)であって,少なくとも1つの入力体(E)と,出力体(A)と,少なくとも部分的に運転媒体である油で充填可能な室内に配置された振動減衰装置(3,4)とが設けられており,該振動減衰装置(3,4)が,回転数適応型の動吸振器(5)に連結されている形式のものにおいて,回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計されていることを特徴とする,駆動装置と被駆動装置との間で出力伝達するための力伝達装置。 
 【請求項2(本件発明2)】
(省略)
 【請求項3(本件発明3)】回転数適応型の動吸振器(5)の有効次数qeffが,駆動装置の励振の次数qを0.05~0.5の範囲内の次数オフセット値qF だけ上回っている,請求項1または2記載の力伝達装置。
 【請求項4(本件発明4)】
 回転数適応型の動吸振器(5)の有効次数qeffが,駆動装置の励振の次数qを0.05~0.4の範囲内の次数オフセット値qF だけ上回っている,請求項3記載の力伝達装置。 
 【請求項5(本件発明5)】
 回転数適応型の動吸振器(5)の有効次数qeffが,駆動装置の励振の次数qを0.05~0.3の範囲内の次数オフセット値qF だけ上回っている,請求項3記載の力伝達装置。 
 【請求項6(本件発明6)】
 回転数適応型の動吸振器(5)の有効次数qeffが,駆動装置の励振の次数qを0.14~0.3の範囲内の次数オフセット値qF だけ上回っている,請求項3記載の力伝達装置。 
 【請求項7(本件発明7)】
 回転数適応型の動吸振器(5)が,遠心振り子装置として形成されており,…(以下省略)
 【請求項8(本件発明8)】
 次数オフセット値qF の量が,駆動装置の励振の次数qの変化に比例して変化するようになっている,請求項1から7までのいずれか1項記載の力伝達装置。
 【請求項9(本件発明9)】(省略)
 【請求項10(本件発明10)】
 少なくとも1つの入力体(E)と,出力体(A)と,少なくとも部分的に運転媒体である油で充填可能な室内に配置された振動減衰装置(3,4)とが設けられており,該振動減衰装置(3,4)が,回転数適応型の動吸振器(5)に連結されている,駆動装置と被駆動装置との間で出力伝達するための力伝達装置(1)の減衰特性を改善するための方法において,回転数適応型の動吸振器(5)を,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計することを特徴とする,駆動装置と被駆動装置との間で出力伝達するための力伝達装置の減衰特性を改善するための方法。
 【請求項11(本件発明11)】(省略)
 【請求項12(本件発明12)】(省略)
3.本件審決の理由の要旨
 原告は,次の①-⑦を主張した。
 ① 無効理由1: 本件発明1~7及び9~12について,甲4文献に記載された発明(甲4発明)及び技術常識に基づく進歩性欠如
 ② 無効理由2: (省略)
 ③ 無効理由3: (省略)
 ④ 無効理由4: (省略)
 ⑤ 無効理由5: (省略)
 ⑥ 無効理由6: 請求項1及び請求項8の記載についてのサポート要件違反,
 ⑦ 無効理由7: (省略)
 本件審決の理由は,要するに,① 無効理由1~3につき,相違点1に係る構成を当業者が容易に想到することができたとはいえないから,特許法29条2項に該当しない,② 無効理由4,5につき,相違点2に係る構成を当業者が容易に想到することができたとはいえないから,同項に該当しない,③ 無効理由6につき,請求項1~12の記載は,同法36条6項1号の規定に違反しない,④ 無効理由7につき,請求項7及び12の記載は,同項2号の規定に違反しないとして,原告の無効審判請求は成り立たない。
4.本件発明と引用発明の対比
 ア 本件発明1と甲4発明 
[相違点1]本件発明1では,「回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計されている」のに対し,甲4発明では,補償フライホイール質量体54を切欠き53で案内するキャリア51が,どのように設計されているか不明である点。
 イ 本件発明1と甲8発明 
[相違点2]「固有周波数が可変的である動吸振器」に関して,本件発明1は,「回転数適応型の動吸振器(5)」であり,「回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計されている」のに対し,甲8発明では,スプリング・マス・システム22が可変的な固有振動数を持つものであり,スプリング・マス・システム22がどのように設計されているか不明である点。
5.原告主張の取消事由
 ① 取消事由1:無効理由1~3につき,本件発明1と甲4発明との相違点1の認定,判断の誤り 
 ② 取消事由2:(省略)
 ③ 取消事由3:(省略)
 ④ 取消事由4:無効理由6につき,サポート要件違反に関する判断の誤り 
 ⑤ 取消事由5:(省略)
6.当裁判所の判断
 ① 取消事由1について 
(1) 技術常識に基づく容易想到性(無効理由1に関し)について 
 ア 本件出願前の刊行物及び本件出願時の技術常識に関し,次の事実が認められる。 
(ア) 本件優先日以前から,遠心振り子及び動吸振器について次の点は技術常識であった(甲3,弁論の全趣旨)。
 a 理想条件下(少なくとも,真空下で動作し,かつ,一定の条件を満たす場合。)における,1回転当たりの遠心振り子の振動の数は, √L/l(L:回転体の半径,l:遠心振り子の腕の長さ)に等しい。また,遠心振り子の原理を応用した回転数適応型の動吸振器においても,理想条件下において,動吸振器に固有の幾何学的寸法である,√L/lは,遠心振り子の1回転当たりの振動の数と等しい。
 b 回転数適応型の動吸振器において,理論上最も効果的に駆動装置側の振動を減衰できるのは,遠心振り子の固有振動数が駆動装置の励振の振動数と一致する場合である。これによれば,必ずしも理想条件下にあるとは限らない動吸振器を用いて振動を低減しようとする際には,動吸振器の幾何学的寸法によって算出される固有振動数(又は次数),すなわち,理想条件下での固有振動数(又は次数)ではなく,動吸振器の実際の固有振動数(又は次数)と低減しようとする振動数(又は次数)を合致させることが原則である。 
 c 動吸振器のチューニングについては,「動吸振器の幾何学的次数」(√L/l)と「駆動装置の励振の次数」(N/2)との大小関係に応じ,次のとおり分類することが可能である。 
 ① 動吸振器の幾何学的次数<駆動装置の励振の次数 
 ② 動吸振器の幾何学的次数=駆動装置の励振の次数(以下「イーブンチューニング」という。) 
 ③ 動吸振器の幾何学的次数>駆動装置の励振の次数(以下「オーバーチューニング」という。) 
(イ) 次のとおりの文献の記載からすれば,液体の存在する中においては,振り子の固有振動数(又は次数)が,幾何学的に計算される固有振動数(又は次数)よりも低下することが,本件優先日以前からよく知られていた事項であったものということができる。
 a A pendulum experiment on added mass and the principle of equivalence(甲20。平成19年3月)には,①「真空中の単振り子の振動周期は,重力質量と慣性質量が一致するため,その質量には依存しない。これに対し,流体中では浮力と付加質量が周期に影響する。」(226頁9行ないし11行),②「もし浮力及び付加質量を加味して訂正するならば,方程式(9)から
という,浮力及び付加質量を加味した非減衰の振動の振動数を示す式を得る。」(228頁右欄下から11行ないし7行)との記載がある。(ρは流体の密度,ρbはおもりの密度であり、√(ρb.ρ/ρb+kρ)<1となるから、ω ~<ωaとなる。)
 b 米国特許第6358153号明細書(甲22。平成14年3月19日登録)には,「加えて,このようにして引き起こされる振動子の固有振動数は,軌道に沿って動く偏向質量体が媒体中を動かなければならず,また,増加した抵抗に反して動かなければならないという事実に影響され得る。」(第3欄1行ないし5行),「すなわち,流体82bは偏向質量体50bの動きに抵抗を加える。したがって,個々の振動子の固有振動数は,流体82bによる動作に対する抵抗によって影響される。」(第8欄下から15行ないし11行)との記載がある。 
 c 独国特許公開第10005544号明細書(甲23。平成13年8月16日公表)には,「この従来技術における偏向質量体は,粘性媒体に十分浸されており,偏向軌道に沿った動作中,結合ピンは粘性媒体,すなわち潤滑剤に浸されている。しかしながら,これは,偏向質量室にかなりの量の潤滑流体を充填することを必要とするため,このことは,潤滑に貢献するだけではなく,同時にそれらに必要となる変位による減衰にも貢献する。しかし,そのような減衰効果は振動減衰装置のデチューニングにつながり得るため,意図された振動数の範囲における必要な振動減衰をもたらすことが出来なくなり得る。」(第1欄30行ないし44行)との記載がある。
 イ 本件発明1の「油影響に関連して…設計されている」について
(ア) 相違点1に係る,本件発明1の「回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計されている」ことの意義についてみると,本件発明1の特許請求の範囲には,「所定の次数オフセットqF 」をいかに設定するかについて,「油影響に関連して」されるものであること以上に特定する記載はないから,「油影響」について何らかの関連を有し,何らかの次数オフセットqF だけ大きい有効次数qeffに設計されているという程度の意味であると理解できる。さらに,本件明細書についてみると,① 図3に関する【0038】~【0039】の記載から,同じ設計の動吸振器であれば,回転する油質量体の下では次数値が低くオフセットされるため,その抑制次数qF に相当する分だけ高い次数値への次数オフセットをすることが,遠心力に抵抗する油影響から結果的に生じる作用を考慮することになることが示されているといえる。また,② 【0043】によれば,qF は自由に選択可能な値として規定されていてもよいし,励振の個々の次数に対して,それぞれ固定の値が設定されていてもよいとされているから,次数オフセットqF 自体は,任意に設定し得る値であることが読み取れる。
(イ) 以上によれば,qF は,①のような実験的な測定に基づき設定されるものに限られず,②のような任意の値も採り得るものであるといえる。そして,動吸振器の幾何学的次数が,駆動装置の励振の次数(q)よりも任意の値(qF )の分だけ大きい数値(qeff)になるように設計されているということは,オーバーチューニングに当たるといえる。そうすると,本件発明1の「回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計されていること」は,「油影響」を受ける状況下においては,動吸振器の次数が低下することから,任意の値の次数オフセットにより,動吸振器をオーバーチューニングしたという程度の意味と解される。 
 ウ 「油影響に関連して…設計されている」構成の容易想到性
 上記ア(イ)の技術常識によれば,油中に浸漬され,油という液体の影響を受ける遠心振り子のような動吸振器にあっても,回転する油中であるか否かにかかわらず,その固有振動数(又は次数)に何らかの影響,特に,その固有振動数(又は次数)が低下するような影響が生じるであろうことは,当業者にとって当然に予測し得ることといえる。そして,回転数適応型の動吸振器において,理論上最も効果的に駆動装置側の振動を減衰できるのは,遠心振り子の固有振動数が駆動装置の励振の振動数と一致する場合なのであるから(上記ア(ア)),油の影響を受ける回転数適応型の動吸振器において,効果的に駆動装置の振動を減衰させるためには,油の影響によって固有振動数(又は次数)が低下することから,動吸振器の固有振動数(又は次数)について,任意の値の次数オフセットによりオーバーチューニングするという,相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。よって,相違点1に係る構成は,甲4発明及び技術常識から容易に想到することができたものである。
(2) 被告の主張について 
 被告は,上記(3)の容易想到性に対し,① 「油影響要件」とは,少なくとも部分的に油で充填可能な室内で回転する油が,様々な機序に基づいて動吸振器に作用することを考慮した設計をいうものであるから,相違点1に係る構成は,単にオーバーチューニングすることをいうのではなく,上記の点を考慮した設計をいうものであること,② 液体の存在する中においては,振り子の固有振動数(又は次数)が,幾何学的に計算される固有振動数(又は次数)よりも低下することが,本件優先日以前からよく知られていた事項であったとはいえず,むしろ,本件優先日前には,振動が過大であり振り子が非線形挙動になるときはオーバーチューニングが有効になる場合もあるが,振動が小さく振り子が線形挙動の範囲内にある場合はイーブンチューニングが最適であるというのが技術常識であったこと,③ 動吸振器の振り子が潤滑油による影響を受けることが技術常識であるとしても,潤滑油に関する技術常識は運転媒体である油で充填可能な室内に配置される本件発明の振動減衰装置には当てはまらないことを主張する。 
 ア ①について,本件明細書の記載を考慮すると,「油影響要件」は「油影響」を受ける状況下においては,動吸振器の次数が低下することから,(任意の値の)次数オフセットにより,オーバーチューニングしたという程度の意味に解されるのは上記(3)イのとおりである。
 イ ②に関し,被告は,甲13及び甲20は単振り子に関するものであり,動吸振器に関するものではないところ,動吸振器の挙動は極めて複雑であり,振り子質量にかかる力の大きさ等が異なるから,動吸振器が運転媒体である油で充填可能な室内に配置されて場合の固有振動数の低下を示唆するものではないことを主張するが,動吸振器として用いられる遠心振り子の錘に作用する力は遠心力であり,単振り子の錘に作用する力は重力である点に違いはあるものの,振り子の錘の振れにより周期的な運動をする点では両者は共通するものであるから,例えば甲13や甲20に示されるように,単振り子の錘が液体中に浸漬される場合において固有振動数が低下することによれば,当業者であれば,同じく振り子の錘の振れを用いる動吸振器においても,液体中においては固有振動数が低下する可能性があることを予測するものといえる。
 また,被告は,甲20,22,23は振り子が空気環境下にあるもので,本件発明のように動吸振器が運転媒体である油で充填可能な室内に配置されたものではないと主張するが,上記各文献は,いずれも空気環境下での振動減衰装置の挙動を示すものではない。さらに,被告は,甲5,7,15,16,30,31によれば,本件優先日前には,振動が小さく振り子が線形挙動の範囲内である場合は,イーブンチューニングが最適であるというのが技術常識であった旨主張するが,被告が挙げる証拠は,液体中における振り子の錘の挙動を示すものではないから,これらの文献に基づいて,液体中に浸漬される場合であっても,振幅が小さく,振り子が線形挙動する範囲内にあればイーブンチューニングをするのが最適であるということはできない。
 ウ ③について,上記アのとおり,振り子の錘が液体中に浸漬される場合に固有振動数が低下することからすれば,当業者は,同じく振り子の錘の振れを用いる動吸振器においても,液体中においては固有振動数が低下する可能性があることに想い到るといえるところ,このような事情は,振り子の錘が浸漬される液体が,運転媒体である油であるか潤滑油であるかには関わらないものである。 
(3)以上のとおり,相違点1の容易想到性を否定し本件発明1につき無効理由1の成立を否定した本件審決の判断は誤りである。また,本件審決は,本件発明1につき無効理由1の成立が否定されることを前提として,本件発明1の記載を直接又は間接に引用する本件発明2~7及び9についての無効理由1の成立を否定したものであるから,本件発明1についての容易想到性の判断の誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすものであり,取消事由1には理由がある。
 ② 取消事由4(無効理由6につき,サポート要件違反に関する判断の誤り)について
(1) 特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するのが相当である。 
(2) 上記を前提に,サポート要件違反について検討する。
 ア 上記2(3)イのとおり,本件発明1の特許請求の範囲には,「所定の次数オフセットqF 」について,「油影響に関連して」設定されるものであることのほかに具体的な設定の手法等についての特定はないから,「回転数適応型の動吸振器(5)が,油影響に関連して,駆動装置の励振の次数qよりも所定の次数オフセット値qF だけ大きい有効次数qeffに設計されている」とは,「油影響」を受ける状況下においては,動吸振器の次数が低下することから,任意の値の次数オフセットにより,動吸振器をオーバーチューニングしたという程度の意味に解される。そして,本件明細書の発明の詳細な説明には,① 図3に関連する【0038】,【0039】の記載から,同じ設計の動吸振器であれば,回転する油質量体の下では,次数値が低くオフセットされるから,その抑制次数に相当する分だけ高い次数値への次数オフセットをすることが,遠心力に抵抗する油影響から結果的に生じる作用を考慮することになることが示され,この記載の対応する限度では,当業者は,本件発明の課題(上記1(3)ウ)を解決できるものと認識できるといえる。しかし,上記のとおり,特許請求の範囲には,次数オフセットqF についての具体的な設定の手法等を特定する記載はなく,② 本件明細書【0043】のとおり,任意に設定された次数オフセットqF だけ高い次数値への次数オフセットをする場合も含まれるというべきであるが,このような任意に設定した次数オフセットqF をとった場合については,本件明細書の記載から当業者が本件発明の課題を解決できるものと認識できるとはいえない。そうすると,本件発明1は,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから,サポート要件に適合するとはいえない。
 イ 本件発明2~9についても,上記アに説示したところが妥当するから,本件発明1と同様の理由により,サポート要件に適合するものではない。
 ウ 本件発明10は,本件発明1の「駆動装置と被駆動装置との間で出力伝達するための力伝達装置」の発明に対応する,「駆動装置と被駆動装置との間で出力伝達するための力伝達装置の減衰特性を改善するための方法」の発明である。本件発明1と本件発明10とは,発明のカテゴリーが異なるのみで,その特定事項は実質的に相違するものではないから,本件発明1について上記アに説示したところは,本件発明10についても妥当するといえる。本件発明11及び12についても同様の理由により,サポート要件に適合するとはいえない。 
 エ 被告は,本件明細書【0038】,【0039】,【0043】,【0046】及び図3の記載を挙げて,本件発明はサポート要件を充足すると主張するが,上記に照らし採用できない。 
(4) 以上のとおり,本件発明1~12についてサポート要件に反しないとした
本件審決の判断は誤りであるから,取消事由4には理由がある。
5 以上のとおり,本件発明1~12は無効理由1及び6によって無効とされるべきところ,これを否定した本件審決の判断には誤りがあるから,取消事由1,3及び4には理由があり,本件審決は取り消されるべきである。よって,主文のとおり判決する。
以上